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ある出来事で・・・
(2008年5月号 VOL.82)

あるひとつの出来事で突然、立場が逆転することってありますよね。
認識がガラリ180度変ってしまうって事ですけど・・・。

我家では相変わらずテレビの線を切っています。
息子の勉学のために始めましたが、今では全然勉強をしない息子に対する"当て付け"と"意地"です。
しかし、お互い暇ですから、将棋を毎晩指しています。
(こんなことでは何の為にテレビの線を切っているのか分かりませんね。)
私の父は有段者で、私も父とよく指しました。
父に勝ったことなどほとんど無いですけど・・・。
何百回と指しましたが、私も息子には一度も負けていません。
しかし、コテンパンにやっつけてしまうと、やる気を無くします。
序盤は攻めさせて、勝てるかもしれないと思わせて最後に逆転します。
やはりそこは勝負です。
父親の威厳を保つため一度も勝たせてあげないのです。


ところで、そんなある日、息子が小遣いを上げて欲しいと要望するので、将棋で勝てたら上げてあげても いい。と言いました。
「よ〜し、本気でやるよ。お父さん。」
と、生意気なことを言います。
(猪口才(ちょこざい)な奴じゃ。)
しかし、なんと、その小遣いを賭けた大一番に私は負けてしまいました。
あれ?
今まで私が息子に遊んであげていたと思っていたのですが、遊ばれていたのは私なのでしょうか?
私は一晩悩んでしまいました。
息子は息子なりに父親に気を使って負け続けていたのでしょうか?
まさに、立場が逆転してしまいました。
認識が180度変ってしまいました。

翌日から何も賭けないで将棋を指していますが、以前のように息子には一度も負けません。
「いゃ〜やっぱり、お父さんにはかなわないや。」
と言う息子の台詞さえも、わざとらしく聞こえます。
手加減をしているのは私でしょうか?
息子なのでしょうか?
もう疑心暗鬼です。
賭け将棋などしなければよかった。

もう一度、小遣いを賭けて指せばはっきりするんじゃないか?と、皆さんは思われるかもしれませんが、そ んな事怖くて出来ません。
今まで、息子に負けたのは「じゃ本気でやるよ。」と言われたその賭け将棋の一番だけです。
もし、また賭けて「本気でやるよ。」と言われて負けたら・・・。
賭けるのは小遣いではなく、父親の尊厳です。
駒を握る手が震えるかもしれません。
とても、とても、怖くってそんな勝負は出来ません。
たった一度の勝負で、立場が逆転してしまい、まさに、認識が180度変ってしまいました。




(南)
2008.05

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